2018年11月29日、株式会社マルケトがPR TableとHRMOS採用管理、そして自社サービスであるMarketoを導入し「採用マーケティング」を推進していくとのリリースが発表されました。HR Marketing Lab編集部としてはお話を聞かないわけにはいかない!ということで、すぐに取材をさせていただきました。

採用活動を個人にカスタマイズ
―― まずは今回のリリースについて、具体的な内容を教えてください。
佐藤さん: まずPR Tableで社員紹介などのコンテンツを作成し、マーケティングオートメーション(MA)ツールのMarketoを活用して採用候補者と長期的にリレーションを取っていくような取り組みを行っています。そこでの候補者管理はHRMOS採用管理にて行う形です。
―― 具体的にはどのような導線を設置しているのですか?
佐藤さん: 仕組みとしては、PR Tableに掲載されているコンテンツの下部に会社説明資料ダウンロードをコンバージョンポイントとして置いています。ダウンロードしてくれた方には約3日後に座談会のお知らせなどをお送りするような流れです。
―― どうしてこのような取り組みを始めようと思ったのでしょうか?
千葉さん:採用は、企業成長のかなめとして、人事(タレントエンゲージメント部)だけでなく会社全体の最優先課題として捉えています。その中で、タレントエンゲージメント部を中心に組織横断して、1to1エンゲージメント構築を支援する自社ツール「Marketo」を使ってみるのがいいのではという声をもとに、満を持して自社実践した形です。
―― なるほど。設計はどのようにしていかれましたか?
千葉さん: 最初の段階で構想の大枠は決めてしまって、細かい点は進めながら詰めていきました。2018年7月にキックオフをして、8月からPR Tableさんでコンテンツをリリースし、Marketoに繋いだのが8月末頃ですね。10月頃から少しずつ効果が出てきました。
開始3ヶ月で30人程の応募をいただいています。

佐藤さん: PR Tableのコンテンツや求人票をどのくらい読んでいるか、お送りしているコンテンツをどのくらい開封しているか、といった部分をウォッチして、その人の興味関心にあわせて次のお知らせやコンテンツを配信しています。
―― なるほど。これまで「一対多」の一方通行だった採用活動を、個人にカスタマイズしているわけですね。
千葉さん: そうですね。あとはその候補者の方がすぐに自社に転職してくれるとは限らないですし、お互いにとって今がベストのタイミングじゃないこともあるかもしれない。でもこういった形でMarketoと連携させておけば、長期的にお付き合いができるようになっていきます。
―― たしかに、一度接触したときに縁がなかったらそれっきりになってしまうケースって多いですよね。これは採用担当者が目の前の候補者さんや短期的な採用目標を優先させていることも要因のひとつとしてあると思います。それでも中長期的な取り組みに力を入れるべき理由はありますか?
千葉さん:現時点でどれだけ採用できていても、何かしらの変異で産業構造や労働環境に変化が起きた際に、突然採用ができない会社になってしまう可能性もあります。経営視点では中長期的な視点を持っておくことで企業の採用力に差が出てくるのではないでしょうか。
人事に求められる力とは?

―― リリース後の反応はいかがですか?
千葉さん: 特にマーケティングサイドの方々からは「だよね」という反応が強い気がしますね。
―― たしかに、マーケターとしてリードジェネレーションやナーチャリングの流れを知っている方からすると、この考え方を採用に活用するのは自然に感じるかもしれないですね。
千葉さん: そうですね。ただそれをテクノロジーを使って具現化した事例は、私はあまり聞いたことがないですね。
佐藤さん: PR Tableは企業さんの情報発信のサポートをずっとしてきましたが、テクノロジーとの連携を試みたのは今回が初めてでした。「自社でもやってみたい」というお声がけは増えています。
―― 人事の方の反応はいかがでしたか?
千葉さん:エージェントさんや求人媒体を中心に採用活動を進めていた方も、最近ではリファーラル採用など、自社理解を深めミスマッチングを防ぐようなチャネルを新たに拡大されているケースも増えていますよね。または取り組むべきなのに着手できない危機感を持たれている方も多いように感じています。
―― とはいえ、マーケティングの基礎知識がない方がこのような取り組みをするのは難易度が高いのではとも思います。
千葉さん: そうですね。今後は一層人事の方もこのようなマーケティング思考を求められると考えています。最近は人事以外のバックグラウンドを持つ方が人事担当になるケースも増えているので、そういう形で採用マーケティングの考え方が広まればいいなと期待をしています。
佐藤さん: あとは、人事の方がビジネスにも触れているという経験もすごく重要だと思います。マーケティングのメソドロジーを知っているだけでなく、現場でどういう人が求められていて、どんな人が活躍するんだろうかという感覚を掴めることが重要ですよね。
千葉さん: 今回の取り組みが、キャリアの新しい示し方や適材適所の人材配置の実現の示し方にもなるといいなと思っています。
設計に時間をかけず、まずは始めることがポイント
―― 今回お話を伺っていると、人事に求められるスキルの幅がとても広がっているように感じました。採用マーケティングを取り組む上で、マーケティング知識のない方でも取り組めるTIPSのようなものを教えていただけませんか?

千葉さん: まずは、自社の新入社員に話を聞くことから始めるのがいいと思います。どうやって会社を知り受験しようと思ったのか、面接のプロセスでどう感じたかなど、採用の体験を聞いて改善点を探すこと。そして、今回の弊社などの取り組みで出来上がった「型」をベースに自社向けにカスタマイズ頂ければいいと思っています。
佐藤さん: 今回うまくいったのは、コンテンツドリブンで始めたことだと思います。最初にコンテンツを作って、そこから仕組みを構築していきました。滞ることもなくポンポンと進んでいきましたよね。
千葉さん: そうですね。もちろん、ペルソナ設計や顧客体験は考えつつも、相手の心に響くコンテンツかは実際やってみないとわかりません。スピード感をもってPDCAを回してみました。カスタマージャーニーが分岐型になるのと同じで、相手の気持ちは常に変わるので。なので細かな設計や定義を整理に時間をかけずにまずはコンテンツを作って始めるのがいいのではと思います。
―― 最後に今回の取り組みのように、採用マーケティングに取り組む価値について教えてください。
千葉さん:人事部をはじめ、組織として今までの成功体験や固定概念に縛られていると、時代の流れに置いて行かれてしまうと思います。いち早く、時代にあった、一人ひとりとエンゲージメントした採用のあり方を考えないと、人材確保ができず事業継続ができなくなる可能性もあるのではと危惧しています。事業成長を担う人材を確保、育成できる企業とそうでない二極化が今後ますます進むのではと思っています。

佐藤さん: 今回の取り組みで面白いなと思っているのは、MAをハブにしてコンテンツとATSを連動させることで企業と個人のコミュニケーションが生まれることなんですよね。これって自社のことを好きになってくれる人のリストを作るようなものだと思っているんです。じゃあ興味を持ってくれている人にはどんなコミュニケーションをしたらもっと好きになってもらえるか?というのを考えて、テクノロジーを介して1対1で対話ができるようになる。これってこれまでにはない考え方だと思っています。
―― ありがとうございました!マーケティングのリードジェネレーションやナーチャリングといった考え方を採用に応用させる事例でした。一見難しそうにも思えますが、お二人がおっしゃるように「すでにあるフォーマットを利用してまずは始めてみる」というのもひとつのやり方だなと思います!
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